コンセプト解説

責任あるAI

AIはいまや、ローンの審査や採用の書類選考、医師の診断の手助けまでしています。では、正確でさえあれば十分でしょうか。特定のグループを不公平に扱っていないか、なぜその判断になったのかをだれかが説明できるか、間違えたときにだれが責任を持つのか。そこまで考える必要があります。この解説では、責任あるAIの原則と、それを実際に守るための方法を順に見ていきます。

01

責任あるAIの原則

各国の政府や国際機関、AI企業が、それぞれAI原則を発表しています。名前や数は少しずつ違いますが、言っている中身はほぼ同じです。下の図で原則を選んで、その原則が崩れると何が起きるのかを見てみましょう。

原則
公平性
似た条件の人を、属するグループによって違う扱いをしない
崩れた例
同じ経歴なのに、性別によってスコアが低く出る

6つの原則がそろって支えて、はじめて信頼できるAIになる

公平性:似た条件の人を、属するグループによって違う扱いをしない。崩れた例 — 同じ経歴なのに、性別によってスコアが低く出る。

原則意味
公平性性別・年齢・地域といったグループによって、似た条件の人を違う扱いをしない
信頼性と安全性さまざまな条件でも想定どおり安定して動き(堅牢性)、害を与えない
プライバシーとセキュリティデータを守り、同意を得た範囲でだけ使う
包括性障害・年齢・言語・地域にかかわらず、だれでも使える
透明性AIを使っていることと、どう判断するのかを伝える(説明可能性を含む)
アカウンタビリティ(説明責任)結果に責任を持つ人がいて、異議を申し立てて誤りを正す手続きがある

原則を書き出しただけでは、だれも守ってくれません。ここから先は、それぞれの原則について実際に何を測り、何を用意するのかを見ていきます。

問題文にこんな表現があれば → これを選ぶ

  • “似た条件の人を、グループによって違う扱いをする”公平性の問題
  • “さまざまな条件でも安定して動く”信頼性と安全性(堅牢性)
  • “障害や言語にかかわらず、だれでも使える”包括性
  • “AIが関わっていることと、どう判断するかを知らせる”透明性
  • “結果に対する責任者と手続きがある”アカウンタビリティ

いちばんよく問題になるのが公平性です。では、AIはなぜ特定のグループを不利に扱ってしまうのでしょうか。

02

バイアスはどこから来るのか

AIは差別しようとしているわけではありません。バイアスのほとんどは、データから来ます。モデルは見せられた例から学ぶので、データが偏っていれば、結果も同じ方向に偏ります。下の図は音声認識モデルの例です。話し方ごとに学習データがどれだけあり、どれくらい聞き取りを誤ったかを示しています。

標準語
900時間・誤り 5%
方言
100時間・誤り 22%

音声認識モデル — 学習データの量と、話し方ごとの誤り率(例)

方言の録音が学習データの10%しかないため、方言で話す人の声は4回に1回ほど(22%)聞き取れません。モデルがわざと差別しているのではなく、データが偏っているのが原因です。

バイアスの種類どう生まれるか例
サンプリング(代表性)バイアス一部のグループのデータが少なすぎる方言の録音が少なく、方言の聞き取りをよく誤る
歴史的バイアス過去の不公平な判断がデータに残っている過去にあまり採用されなかったグループに、モデルも低いスコアをつける
測定・ラベルのバイアス正解ラベルのつけ方が偏っているあるグループの行動ばかりが「リスクあり」とラベル付けされていた
代理変数外したはずの機微な情報を、ほかの特徴量が代わりに伝えてしまう性別を外しても、名前や趣味から性別がわかってしまう
ここが引っかかりやすいところです。性別・年齢・地域といった機微な属性を入力から外しても、バイアスは消えません。ほかの特徴量が同じ情報を運んでしまうからです。だからこそ、結果をグループ別に分けて、実際に測る必要があります。

問題文にこんな表現があれば → これを選ぶ

  • “あるグループの学習データが少なく、性能が低い”サンプリング(代表性)バイアス → データを集める
  • “過去の差別的な判断をモデルがまねる”歴史的バイアス
  • “機微な属性を外せばバイアスはなくなる”誤り — 代理変数が残る
  • “データセット内のグループごとの割合を確認する”バイアスの検出(データ分析)

では、モデルが公平かどうかを、実際の数字で確かめるにはどうすればよいのでしょうか。

Pro限定

ここまでは無料で読めます

残りの5章はPro会員向けです。各章に3D図解と「問題文にこんな表現があれば」の整理が続き、最後の章では実際に解いて確かめられます。

  1. 03公平性を測る
  2. 04説明可能性
  3. 05透明性と文書化
  4. 06ガバナンスと規制
  5. 07状況を原則で読み解く

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