コンセプト解説

ハルシネーションとガードレール

生成AIは、間違ったことも自信たっぷりに話します。そして、そそのかされれば有害なことも言えてしまいます。前者をハルシネーション、後者を防ぐ仕組みをガードレールと呼びます。このページでは、ハルシネーションがなぜ起きてどう減らすのか、ガードレールがどこで何を止めるのか、個人情報や攻撃にどう向き合うのかを順番に見ていきます。

01

ハルシネーションはなぜ起きる?

ある家電メーカーが、サポート用のチャットボットを公開しました。お客さまが新製品の電気ケトル K2の特徴をたずねると、チャットボットは4つの文でなめらかに答えました。下の図で、回答の文を1つずつ製品の説明書と照らし合わせてみましょう。

容量は1.7Lです
未確認
沸騰すると自動で電源が切れます
未確認
保証期間は2年です
未確認
本体は食洗機で洗えます
未確認

質問:「電気ケトル K2 の特徴を教えて」

モデルの回答はなめらかで、自信がありそうに見えます。説明書との照合をオンにしてみましょう。

事実ではないことや根拠のないことを、事実のように話してしまう現象をハルシネーション(hallucination、幻覚)といいます。大きく分けて2種類あります。世の中の事実と違うことを言うケースと、渡した資料と食い違うこと・資料にないことを言うケースです。図の「保証2年」は資料と食い違い、「食洗機で洗える」は資料にないことをでっち上げていました。

原因は、LLMが文章を作る仕組みにあります。LLMは事実を調べてから答えているわけではありません。前の文に続く、いちばんもっともらしい言葉を選んでいるだけです。電気ケトルの説明には「保証2年」や「食洗機対応」といった言葉がよく出てくるので、自然に見えてしまうのです。学習したことのない製品、学習が終わった後のニュース、あいまいな質問ほど、でっち上げが起きやすくなります。

ここが引っかかりやすいところです。ハルシネーションを起こした文も、正しい文とまったく同じように自信のある口調で書かれます。口調では見分けられないので、根拠と照らし合わせるか、人が確認する必要があります。

問題文にこんな表現があれば → これを選ぶ

  • “事実ではない内容をもっともらしく生成する”ハルシネーション
  • “提供したドキュメントと食い違う・ドキュメントにない内容”根拠から外れたハルシネーション
  • “存在しない論文や出典を引用する”ハルシネーション(架空の出典)
  • “自信のある口調だから正しい答えだ”誤り — 口調では判断できない

ハルシネーションを完全になくすことはできません。では、どこまで減らせるのでしょうか。

02

ハルシネーションを減らす

ハルシネーションは、1つの方法だけでは解決しません。いくつもの対策を重ねて減らしていきます。下の図で、対策を1つずつ足してみましょう。

誤答の割合
28%

電気ケトルのサポートチャットボットに対策を1つずつ足したときの誤答の割合(例)

何も対策しないと、モデルは知っている範囲で答え、10回に3回ほど(28%)間違えます。

方法どう減らすか
RAGで根拠を添える知らない情報をでっち上げる代わりに、検索して添えた資料を読んで答えさせる
「分からなければ分からないと言う」と指示資料にない質問に、もっともらしい答えを作らせない
出典の表示と根拠との照合回答の文ごとに根拠を示させ、根拠と合わない文を自動で見つける
段階的に考えさせる何段階もある計算や推論でのミスを減らす
人によるレビュー間違えると危険な回答は、出す前に人が確認する

よくある誤解が2つあります。1つ目は、temperatureを下げれば正しくなるという誤解です。下げると回答のばらつきが減るだけで、事実になるわけではありません。2つ目は、事実を覚えさせるためにファインチューニングするという方法です。学習した事実をモデルがいつも正確に取り出せるとは限らず、情報が変わるたびに学習し直す必要があります。事実はRAGで渡し、ファインチューニングは口調や形式を整えるのに使いましょう。

問題文にこんな表現があれば → これを選ぶ

  • “最新の社内データに基づかせてハルシネーションを減らす”RAG(グラウンディング)
  • “資料に答えがないときにでっち上げさせない”「分からなければ分からないと答える」と指示
  • “回答の各文が資料に基づいているか自動で確認”グラウンディングチェック
  • “temperatureを0にすればハルシネーションはなくなる”誤り
  • “間違えると危険な分野の回答”人によるレビュー(ヒューマンインザループ)

ハルシネーションは、モデルが自分でミスをする問題です。一方で、ユーザーがわざと有害な答えを引き出そうとしたり、モデルが言ってはいけないことを言ってしまったりする問題もあります。

Pro限定

ここまでは無料で読めます

残りの5章はPro会員向けです。各章に3D図解と「問題文にこんな表現があれば」の整理が続き、最後の章では実際に解いて確かめられます。

  1. 03ガードレール
  2. 04コンテンツフィルター
  3. 05個人情報のマスキング
  4. 06レッドチーミングとモニタリング
  5. 07状況に合った対策

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